複合系の光機能研究会 The Photofunctional Complexes Research Association Japan

第11期会長挨拶-竹田 浩之(群馬大)

2024年4月より、湯浅順平前会長の後を継ぎ「複合系の光機能研究会」第11期会長に就任いたしました。湯浅前会長と同世代で、同じくこの研究会に育てていただいて参りました。これまで築かれてきた研究会の良さを受け継いでいきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。

本研究会では毎年、配位化合物の光化学討論会を開催しています。今年で35回を迎える歴史ある討論会で、多彩な光機能を発現する配位化合物の研究を、基礎から応用に至るまで幅広く議論することができます。本研究会が対象とするのは、配位化合物の光物理・光化学、光反応の基礎と、光機能、さらには種々の物質との融合による光機能化に関する研究です。このため、配位化合物のみならず、有機金属錯体、超分子系、無機・有機ハイブリッドなどの「複合系」の光化学を対象としています。近年、研究分野が細分化される中、分野間の融合による相乗効果の発現が期待されています。多彩な分野の研究者が協力することで新たな発展が見込まれます。一つの会場で議論されるこの討論会では、様々なバックグラウンドを有する研究者が相互理解することで研究の複合化のきっかけを得ることも可能です。

また、学生の教育にも力を入れています。討論会に続く日程で、大学院生向けの勉強会である夏の学校が若手の会により開催されます。これにより討論会で議論される研究の根底にある化学を学ぶことができます。

今期は、大きな禍根を残した新型コロナウイルス感染症も収束に向かい、対面での学会開催も通常化しています。これまで2019年の第32回討論会では名古屋工業大学の塩塚先生が、第33回討論会では高知工科大学の伊藤先生がオンラインでの討論会開催にご尽力くださいました。昨年度の第34回討論会からは佃先生のご尽力により晴れて山梨大学での現地開催が可能となり、今年度は、長谷川美貴先生らによる第35回討論会が青山学院大学で開催されます。皆様方の積極的なご参加をお願いいたします。

第11期も、個々の研究者が築いてきた知識体系と、新展開への挑戦とが融合できるよう努めてまいります。世代間での相互作用も活発な研究会を維持できるよう皆様方のご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
(令和6年4月吉日)

第11期役員一覧(2024/04-2026/03)
会長 竹田 浩之(群馬大)
副会長 小林 厚志(北海道大)、作田 絵里(長崎大)
事務局 中村 一希(千葉大)、宮田 潔志(九州大)
庶務 平原 将也(大阪工業大)、山内 幸正(九州大)
会計 滝沢 進也(東京大)
会計監査 石井 あゆみ(早稲田大)

第10期会長挨拶-湯浅 順平(東京理科大)

2022年4月より、長谷川美貴先生の後任として複合系の光機能研究会の会長を拝命いたしました。学生時代から参加し、様々なことを学ばせていただいた研究会でこのような重要な役割を拝命し、緊張するとともに喜びを感じております。これまでの研究会の伝統を重んじつつ、新しい世代として研究会に貢献できるよう努力いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
 コロナ禍から3年が経過し、ようやく世の中が落ち着きを取り戻してきました。この間、研究会の活動が維持できたのは、多くの会員の皆様方のご尽力によるところが大きく、改めて感謝申し上げます。研究会の会員の皆様方のご研究も益々に発展し、苦しい日々ではありましたが、「やれば出来る」という勇気を貰った3年間でもありました。
 2022年4月初旬には、本研究会の主たる行事である「第33回配位化合物の光化学討論会」のオンライン開催を決断し、お知らせいたしました。世話人代表の伊藤先生には難しい討論会運営になったにも関わらず、見事に討論会を成功に導いていただきました。また長谷川前会長を初め、歴代の多くの会長からご助言励ましのご連絡をいただきました。この場をお借りして改めて感謝申し上げます。2023年8月に山梨で開催予定の「第34回配位化合物の光化学討論会」はこのままの状況で推移すれば、晴れて現地開催ができる見通しです。「配位化合物の光化学討論会」としては4年ぶりの対面形式の討論会となります。会員の皆様が一堂に会し、盛大に討論会と夏の学校を開催できるよう出来るだけ多くの方にご参加いただければ幸いです。
 本研究会は2023年度で20周年を迎えました。本研究会は、「錯体」と「光」という2つの大きな柱を起点とし、生物分野、材料分野も視野に入れた裾野の広い研究会に飛躍しつつあります。会員数も200名を超え、様々な専門分野の研究者、学生会員が自由な雰囲気で討論できる場となっています。より多くの方が本研究会に参画できるよう、事務局の先生方のお力をお借りしつつ会を運営していく所存です。今後、研究会がさらに発展するよう全力を尽くしてまいりますので、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。
(令和5年4月吉日)

第9期会長挨拶-長谷川 美貴(青山学院大理工)

2020年4月より、柘植清志先生の後任として複合系の光機能研究会の会長を拝命いたしました。光機能と錯体化学の境目に位置する研究者として、この研究会に対する愛着はひとしおで、初学者のころより勇気と知識とかけがえのない議論の機会を与えていただいておりました。これまでの研究会の勢いを引き継ぎ、貢献できるよう努力いたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 おそらく、多くの会員の皆様方が4月から5月にかけてテレワーク等で研究・教育活動に従事されていらっしゃることと拝察します。昨年末頃から世界中に蔓延しはじめた新型コロナウイルスの脅威に、化学者として自分はなすすべもない無力さを感じました。しかし、時は流れ必ず迎える平穏な日々に向け、目の前のできること、取り組むべきことを仲間と見つめなおし、次世代の人材の育成にもこれまでと変わらず力を注いでいくのが義務でもあり、アカデミアで今を生きる人の使命だと信じています。
 4月初旬には、早々に本研究会の主たる行事である「第32回配位化合物の光化学討論会」の次年度への延期を決断し、お知らせいたしました。これには柘植前会長を初め、歴代の多くの会長からもご支援のご連絡をいただき、事務局や同討論会の世話人代表を務められた先生方にも慎重な議論に加わっていただきました。本務も平常と異なる新年度のスタートで大変な時期にお世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。特に、次の討論会の世話人をお引き受けくださっている塩塚理仁先生におかれましては、もう一度仕切り直しとなりますこと、ご快諾頂きました。討論会延期に伴い、野崎浩一先生とも議論を重ね、若手の会夏の学校もやむを得ず次年度に延期することになりました。若手の会運営メンバーのご協力を今後もお願いいたします。次年度は、多くの会員が一堂に会し、盛大に討論会と夏の学校を開催できるものと楽しみにしております。
 本研究会は今年度で17周年を迎えました。学会の種類が増え細分化されていく中で、本研究会は、錯体と光、生物系分子と光、など、光と物質をつなぐ架け橋を担う立ち位置にあり新しい視点を生み出す非常に貴重な議論の場です。会員数も200名を超え、ますますこの研究会のコンセプトに基づいた学術交流の場が求められていることを感じます。自由で明るくて未来を感じる真剣な討論ができる研究会であり続けるために、研究会の運営にご尽力くださっている先生方と一丸となって最善策を見極めながら柔軟に対応していく所存です。これから2年間、研究会の活気を維持すべく全力を尽くしてまいりますので、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。
(令和2年4月吉日)

第8期会長挨拶-柘植 清志(富山大院理工)

「配位化合物の光化学討論会」に参加する研究者の意見交換と研究進展を目的として本会が発足してから15年が経過しました。この間に、「光」に関わる研究はますます重要性を増し、光合成・発光ダイオード・発光センサーなど実用に向けた研究の飛躍的な進展と、それを支える光物理的測定法、解析法の深化には目覚ましいものがあります。これらの光化学研究の中でも、配位化合物・配位結合の重要性も非常に強く認識されるようになってきています。
 本会が主催している「配位化合物の光化学討論会」には、この分野を精力的に開拓してきた研究者に加え、若手研究者、他分野からの研究者も参加しています。一つの会場で三日間にわたり、口頭講演・ポスター発表を行い、全ての参加者が全ての発表を聞き議論をするというスタイルは、物質開発中心の研究者にとっては測定・理論についての深い知識を得る機会である一方、光物理の研究者にとっては新しい物質と出会う機会であり、この分野を横断的に知る重要な場を提供していると考えています。大きな学会で陥りがちな発表して終わりという形ではなく、発表する側も聞く側もこの分野に興味を持つ研究者として、実質的な討論を行える「配位化合物の光化学討論会」を会の主要な行事とすると同時に、討論会以外の場面でも会員間での情報発信、情報交換を可能にし、本分野を発展させる会としていきたいと思います。
 また、本会の特徴として若手の育成が挙げられます。毎年討論会の前後で実施されている「夏の学校」は、お二人の講師が本格的なテキストを作成し、それをもとに半日ずつ講義を行うという形で光化学の基礎を次の世代に伝え、新たな研究を支える足腰の強さを養うものです。本会の運営にも積極的に若手を登用し、若手准教授、助教メンバーによるミニシンポジウム開催やニュースレターにより、相互の情報交換を積極的に進めてもらっています。
第8期においてもこのような活動を引き続き行い本会会員から画期的な研究成果、革新的光機能材料が生まれるよう会員間の実質的な交流・議論が一層活発になるよう努めて参ります。本研究分野に関心をお持ちの研究者の方は、配位化合物の光化学討論会に参加し、多様な切り口からの議論を楽しんで頂ければと思います。また本会では関係分野の情報をメールやニュースレターの形で配信しています。研究会会員にも登録頂き、本分野の発展にご協力頂ければと思います。(平成30年4月)

第7期会長挨拶-長谷川 靖哉(北大院工)

金属イオンと有機分子から構成される金属錯体は、金属まわりの配位環境によって様々な物性を発現する「機能物質」と言えます。この金属錯体は化学分野における重要な研究対象であり、世界中で盛んに研究が行われています。この金属錯体は分子設計ができる点に特徴があり、その配位構造によって多彩な機能を発現します。
 近年、この金属錯体を用いた光科学技術の重要性が急速に高まっています。これは金属錯体の光物理過程解明だけでなく、人工光合成系の解明を目的とした金属錯体の光触媒機能、光エネルギー変換を行う色素増感型太陽電池、発光材料、ディスプレイ素子、光センシング材料、および光生化学機能についての研究にも展開しています。また、金属錯体を集積した組織体や固体結晶およびナノ材料のような新しい研究領域にも、大きな関心が寄せられています。  本研究会では、金属錯体を中心とした複合系の光機能を大いに探求していきたいと思います。金属錯体および複合系の構造と光機能は密接にリンクしています。学術的な立場から科学を探求し、産業界とも連携を取りながら「複合系の光機能」の研究発展に貢献したく思っております。
 本会の躍進は、学術界の発展と大きくリンクしています。皆様にとって、この研究会が熱く討論および共同研究できる場となるよう、全力を尽して取り組んでいきます。また、新しいメンバーのご参加も大いに歓迎です。第7期会長として、この伝統ある研究会を盛り上げていきたく思います。本会発展に尽力を尽したく思いますので、皆様のご支援・ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
(平成28年4月)

第6期会長挨拶-石井 和之(東大生研)

平成25年4月から“複合系の光機能研究会” 第6期会長を仰せつかりました東京大学 生産技術研究所 石井和之です。
 本研究会は、平成15年8月に設立されました。設立の趣旨は、金属錯体・超分子・有機−無機複合体などの光化学・光機能について、関連分野の研究者が議論する機会を増やすことでしたが、これは、10年を経た現代において正鵠を射たものになってきていると考えています。
 近年、合成・分離技術、測定技術、解析技術の発展により、顕著な新規分子・新規分子物性に関する知識が蓄積されてきています。分子は原子レベルで様々な性質を制御できる利点を有するため、これら新規分子・新規分子物性を積極的に機能化していくことが、次世代科学技術として大変期待されています。その中でも、金属錯体・超分子・有機−無機複合体などの複合系が示す光機能は、基礎分子科学と実用的な技術開発が融合した最先端分野です。具体的には、イリジウム錯体-強燐光を利用した有機EL、ルテニウム錯体-MLCT遷移を利用した色素増感太陽電池、レニウム錯体-CO2光還元能を利用した人工光合成などが最近注目された例として挙げられます。以上の観点から、本研究会が対象とする“複合系の光機能”分野を推進していくことは、科学技術立国を目指す日本の現在及び近未来における社会的な要請と一致していると言えるでしょう。
 そこで、@物理・化学・バイオ・材料・デバイス等の様々な分野間における情報交換、A基礎研究と応用研究間の橋渡し、B新規物質開発と光物理的設計・解析間の強い連携などを推進することにより、本分野の牽引を目指します。そのために、@本研究会が主催する「配位化合物の光化学討論会」や国内外各種シンポジウムの開催、AHPやニュースレター等による情報発信に尽力する所存です。
 今後ともご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
(平成26年4月)

第5期会長挨拶-石田 斉(北里大理)

 この度、野崎浩一前会長の後を受けて、複合系の光機能研究会 会長に就任しました。 2011年3月11日の東日本大震災から1年が経過しました。この震災では多くの方が被災され、1年以上経った今でも復興の歩みは遅く、苦しんでおられる方が多数おられることと存じます。亡くなられた方々のご冥福を祈念し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。  本研究会は、金属錯体・有機金属化合物・無機-有機複合材料・超分子化合物・生体関連物質などの様々な複合系における光機能について、物質を構成している分子の電子状態など基礎的な物性の理解から、新規な光機能開発などの応用を目指す多様な専門分野の研究者の集まりであり、会員数は現在140名を越えています。  主な活動として、毎年夏に「配位化合物の光化学討論会」を主催しています。今年度の配位化合物の光化学討論会は、石井和之先生(東大生産研)のお世話により、8月6日より東京大学駒場キャンパスIIで開催します。本討論会では、対象を配位化合物(金属錯体)に限定せず、多様な複合系物質の光機能について、 その基礎から応用までを幅広く議論します。研究会では討論会に合わせて「配位光夏の学校」も開設し、若手研究者育成にも力を入れております。また、本研究会役員である喜多村 昇先生(北大)、石谷 治先生(東工大)は、この分野の国際会議International Symposium on the Photophysics and Photochemistry of Coordination Compounds (ISPPCC)にInternational Scientific Committee Memberとして参画しており、その開催を支援しています。  近年、発光デバイスにおける遷移金属錯体、希土類錯体の有用性が指摘されたことから、多くの合成化学者が、錯体光化学の分野に参入してこられました。本研究会では、複合系の光機能研究会選書『配位化合物の電子状態と光物理』 の出版などにより、新たにこの分野を学ぼうとされる方々への支援を行っています。また、IUPACにおいて金属錯体・有機金属化合物等のリン光発光スペクトルおよび発光量子収率測定のガイドラインをまとめるという国際的な活動も行っています。  3月11日の東日本大震災では、化学者も大変な衝撃を受けました。これまでの価値観をくつがえされ、自身の研究意義を見失いかねないほどのショックを受けられた方もおられると聞き及んでおります。今回の未曾有の大災害は、人類が短期的な利益ではなく、地球という限りある資源や生態系との調和の下で、有効な方策を練らなければならないことを示していると考えます。特に、エネルギー問題がクローズアップされ、 太陽エネルギー変換デバイスの開発や光物質変換のための光触媒開発に注目が集まっています。このような開発手法や設計指針を模索する上で、本研究会は、光機能性物質に関する重要な基礎研究を支える活動を行っていきたいと思っています。小さな歩みかもしれませんが、それが日本の復興の一助になればと願っています。  今後も本研究会の活動にご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
(平成24年4月)

第4期会長挨拶-野崎 浩一 (富山大理工)

発光デバイス、光エネルギー変換素子、CO2光還元触媒などに注目されている無機-有機複合材料の様々な光機能についての研究が、近年ダイナミックに展開しつつあります。私どもの研究会は、物質を構成している分子の電子状態や、光電子移動などのファンダメンタルな物性・反応性の観点から、複合物質の光機発現機構や光機能性物質の設計指針に関わる議論を展開しています。  本研究会は、広義での配位化合物の光化学現象を討論する場としての「配位化合物の光化学討論会」を開催し、研究成果を発信するとともに、討論会に合わせて「夏の学校」を開設し積極的に若手研究者育成に力を入れております。今年度の討論会・夏の学校は、私がお世話させて頂き、8月に富山で開催します。 また、国際的な活動として、昨年度石谷治先生(東工大院理工)、喜多村昇先生(北大院理)を中心に「配位化合物の光化学と光物理に関する国際シンポジウム (ISPPCC)」を約20年ぶりに日本で開催しました。今年度は加藤昌子先生(北大院理)を中心に「環太平洋国際化学会議PACIFICHEM2010」でのシンポジウム、それに先駆けて石田斉先生(北里大)を中心にコナプレシンポジウムが企画されており、世界中の研究者と光と配位化合物の未知の科学やエネルギー問題解決に向けた最先端の議論が展開されます。  これらの活動とともに、今後も複合系の光機能研究会が発展していきますよう皆様の一層のご協力をお願いします。